全ての生き物は遺伝という情報を持ち、それはアデニン・グアニン・シトシン・チミンの4つの化学物質が連なった塩基配列となっています。血のつながった親子は、この塩基配列に共通する部分がいくつかあり、これでその人の体質や容姿などが形成されていくのです。
正常な人の塩基配列と比べて1つでも配列が異なる化学物質があるだけで、その人の一生が左右されることになり、それが病気の発症の原因としても考えられています。このことから、人の細胞に正常な遺伝子を含めていくことで、症状を抑えていく遺伝子治療が取り組まれるようになりました。これは、1990年代のアメリカで治療が始められ、その後日本でも徐々にではありますが、難病の人たちを対象に進められてきました。それから医療の急激な進歩により、多くの病気を対象に遺伝子治療が取り組まれ、病気に悩まされてきた人たちが回復の兆しを見せています。
遺伝の可能性が高い病気には、一部のがんや高血圧や糖尿病などが挙げられます。これらは生活習慣病にも指定されている病気ですが、実は遺伝と深く関係しているところも大きいので、遺伝要因のある人は不摂生な生活に気を付けてはいてもそのリスクは大きくなってしまいます。そして、神経に関係するアルツハイマー病やパーキンソン病なども遺伝とかかわりが強く、その研究にも力が入れられているのです。
遺伝子治療の対象となる病気やその実績が幅広くなれば、今後の医療に大きく期待することができます。今まで諦めていた遺伝の病気は、この方法で明るい未来の一歩へ近づこうとしています。〔遺伝子治療についての詳細〕